役に立ちたいと思った時点で、緩和ケアは始まっているんです/鍼灸師:鈴木 春子

2人に1人ががんになる時代。予防や治療とともに、痛みなどに苦しむがんの患者さんをいかにケアしていくかは、社会全体の課題といえるでしょう。

鈴木春子(すずきはるこ)先生は、国立がん研究センター中央病院で、鍼灸師としてがん患者さんの緩和ケアに携わってきました。
特に終末期ケア、余命わずかとなった患者さんに対して、どのような想いで鍼灸治療をおこなってきたのでしょうか。

がんに対する鍼灸の第一人者である鈴木先生に、これまでの経験や患者さんへの想いなど、お話をうかがいました。

鈴木 春子(すずき はるこ)先生

略歴
茨城県坂東市生まれ
共立女子大学 文学部 卒業
東洋鍼灸専門学校 鍼灸あん摩マッサージ指圧科 卒業
1994年~2011年 国立がん研究センター中央病院・東病院緩和ケア科
2013~2017年 新座志木中央総合病院緩和ケア科
2000年~ 千葉県市川市にて「無量光寿庵はる治療院」開業
2011年~ 東洋鍼灸専門学校非常勤講師
2015年~ 春の会 鍼灸によるがん緩和ケア研究会

趣味のお米作りで鍼灸と出会う

鈴木先生は、若い頃からずっと鍼灸師を目指していたんですか。最初の鍼灸との出会いについて聞きたいです。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
それが違うんです。もともと主婦だったんですが、夫が38歳の時に亡くなってしまって。趣味が有機農場でお米を作ることだったんですが、その指導をしてくださっていた有機農業実践家の高松修先生から鍼灸のことを聞きました。茨城の八郷にある農場です。形井秀一先生もいらしていたみたいです。
お米作りがきっかけで鍼灸と出会ったんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
たしか、金井先生のお父さんも、お米作りをやっておられましたよね?
はい、今はもうやっていないですけど、週末農家をずっとやっていました。僕も稲刈りを手伝ったりしていましたね。鍼灸師と米作りには、何か関係があるのでしょうか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
やっぱり人間の体って自然や宇宙ともつながっていますから。芽が出て花が咲き、実って枯れる。そんな自然のサイクルと身体は、似ているような気がするんですね。
土に触れて手で自然を感じられるのも、どこか治療に通じるのかもしれませんね。
ゆうすけ
ゆうすけ

主婦から42歳で鍼灸の道へ

鈴木先生
鈴木先生
そんなご縁と、子どもの頃から「人の役に立ちたい」という気持ちがあったので、鍼灸師に興味を持つようになったんです。それで東洋鍼灸専門学校を受験して42歳で入学しました。
40代で鍼灸学校に入ったんですね。もっと若い頃から鍼灸をされていたと勝手に思い込んでいました。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
いえいえ。実は結構、歳をとってから鍼灸の道に入ったんです。
資格を取ってからは、どこか修業に行ったんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
鍼灸学生の時に、国立がん研究センターで鍼灸治療にあたっていた小野太郎先生の、「がん性疼痛に挑む研究会」に入りました。
私自身、父をがんで亡くしているんですが、その時にしてあげられることがそんなになかったんです。今と違ってモルヒネの投与量が少なくて。何かできることがあればと思ったのもありました。
がんに関心を持ったのは、やはりお父さんの影響ですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
そうですね。今と違って、当時は「がんは死ぬ」と言われるような時代でした。とにかく怖い病気だと思っていましたね。

鍼灸で劇的に良くなることも

卒業後すぐに国立がん研究センターで働き始めたんですよね。そこでは何年くらい鍼灸を担当していたんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
17年くらいです。ちょうど小野太郎先生と入れ替わりのような感じで入職しましたね。学校卒業後は、小野太郎先生のもとで学びました。
小野太郎先生というと、接触鍼法を確立した東方会の小野文恵先生のご長男ですね。現場でも接触鍼を実践されていたんですか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
そうです。接触鍼がメインで、患者さんにもよりますが、あまり深くは刺さなかったです。気を動かすことが中心なので、有害事象はほとんどなかったですね。
病院側も安心感があるでしょうね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
白血球の数値がすごく下がってしまい、感染のリスクがあるような患者さんもいますからね。
そんな時に「本当に鍼していいですか?」と医師に確認したら、「注射の針よりも細いし、刺してないから大丈夫です」と言われました。
それこそ移植を受けるような患者さんの病棟で、感染に気をつけながら鍼治療をおこなったこともあります。これは接触鍼ならではだと思います。
それってすごいことですよね。本当に弱っている患者さんに対する鍼…。何か劇的に良くなった印象的な症例はありますか。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
そういうのは結構あります。
例えば、抗がん剤の副作用で痛みとしびれが出ている患者さんがいました。肺がんだったんですけど、副作用が辛くて抗がん剤の治療ができなくなってしまったんです。
過酷な治療もありますものね…。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
痛みを抑える薬が処方されたけど「血が出たかっていうぐらい痛い」っておっしゃって。靴を履くのにも、そっと足を入れるっていう。
そんな状態だったのに、鍼灸治療をしていくうちに、海外に行かれたりテニスを楽しまれたりするまで回復されました。
そんなに良くなるんですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
例えがん自体を治療できなくても、QOLが向上することで結果的に延命にもつながるんですよね。鍼灸治療が、しびれなどの抗がん剤の副作用に対する第一選択になる時代がきたらいいなと思っています。
副作用に対しての鍼灸。
ゆうすけ
ゆうすけ
鈴木先生
鈴木先生
むくみへの効果も期待されますね。重いむくみが劇的に良くなったこともあります。やっぱり「気」が巡ると治療もうまくいくことが多いです。

NEXT:「先生、治りますか?」と聞かれて

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