子どもの頃に喘息に苦しんだことがきっかけで、鍼灸の道を志した先生がいます。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)に関する鍼治療の研究で名高い、鈴木雅雄先生です。
ちょうど10年前、福島県立医科大学会津医療センター附属研究所の立ち上げから参加し、2021年には、同研究所の教授に就任。鍼灸師が国公立の医科大学で臨床系教授に就任するのは初めてになります。
鍼灸師を目指したきっかけから、福島に来てからの10年、そしてこれからの目標まで、鈴木先生にお話を伺いました。
鈴木 雅雄(すずき まさお)先生
【現職】
2021年~ 福島県立医科大学 会津医療センター 漢方医学研究室 教授/漢方医学講座 教授
2021年~ 福島県立医科大学 会津医療センター 漢方医学研究室 教授/漢方医学講座 教授
【学歴】
1997年 明治鍼灸大学鍼灸学部卒業
1999年 明治鍼灸大学博士前期課程修了(修士 鍼灸学)
2004年 明治鍼灸大学博士後期課程修了(博士 鍼灸学)
2015年 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学(博士 医学)
1997年 明治鍼灸大学鍼灸学部卒業
1999年 明治鍼灸大学博士前期課程修了(修士 鍼灸学)
2004年 明治鍼灸大学博士後期課程修了(博士 鍼灸学)
2015年 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学(博士 医学)
【職歴】
2001年 岐阜大学医学部東洋医学講座 非常勤講師
2004年 京都大学大学院医学研究科健康要因学講座Post Doctor Fellow
2006年 医学研究所北野病院第2研究部 客員研究員
2006年 独立行政法人自動車事故対策機構中部療護センター 研究員
2007年 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科 研究生
2008年 明治国際医療大学鍼灸学部臨床鍼灸学教室 助教
2012年 医学研究所北野病院第12研究部 主幹
2013年 福島県立医科大学会津医療センター漢方医学研究室 兼 漢方医学講座
2017年 認定NPO法人 健康医療評価研究機構 上席研究員
2001年 岐阜大学医学部東洋医学講座 非常勤講師
2004年 京都大学大学院医学研究科健康要因学講座Post Doctor Fellow
2006年 医学研究所北野病院第2研究部 客員研究員
2006年 独立行政法人自動車事故対策機構中部療護センター 研究員
2007年 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科 研究生
2008年 明治国際医療大学鍼灸学部臨床鍼灸学教室 助教
2012年 医学研究所北野病院第12研究部 主幹
2013年 福島県立医科大学会津医療センター漢方医学研究室 兼 漢方医学講座
2017年 認定NPO法人 健康医療評価研究機構 上席研究員
【学会】
所属学会:全日本鍼灸学会(教育研修部部長)、日本臨床疫学会(臨床疫学認定専門家)、
日本プライマリケア連合学会(研究支援委員)、日本呼吸器学会、日本東洋医学会(福島県部会委員)、日本緩和医療学会
所属学会:全日本鍼灸学会(教育研修部部長)、日本臨床疫学会(臨床疫学認定専門家)、
日本プライマリケア連合学会(研究支援委員)、日本呼吸器学会、日本東洋医学会(福島県部会委員)、日本緩和医療学会
【受賞】第14回社団法人日本呼吸器学会 Pneumo Forum賞受賞
第57回全日本鍼灸学会高木賞受賞
ATS 2010: American Thoracic Society (ATS) clinical problem travel award受賞
2012年田附興風会医学研究所北野病院最優秀論文賞受賞
第37回代田賞受賞
第26回日本東洋医学会奨励賞受賞
2019年福島医学会奨励賞受賞
第57回全日本鍼灸学会高木賞受賞
ATS 2010: American Thoracic Society (ATS) clinical problem travel award受賞
2012年田附興風会医学研究所北野病院最優秀論文賞受賞
第37回代田賞受賞
第26回日本東洋医学会奨励賞受賞
2019年福島医学会奨励賞受賞
「病んだ小学校時代」が鍼灸の道へ導く
まずは鈴木先生が、鍼灸師になろうと思ったきっかけから聞きたいです。
ゆうすけ
鈴木先生
3歳の頃に発症した気管支喘息がきっかけです。今みたいに良い薬がなかった時代なので、喘息の発作が起こる度に入院していました。入院するとステロイド薬を点滴で入れて発作を抑えるんですけど、1〜2カ月程は入院しないといけないんですよ。小学校時代は、半分入院して半分学校行ってみたいな感じでした。
入退院を繰り返した小学校時代ですか…。
ゆうすけ
鈴木先生
もう入院中は「早くここを出たい」っていう思いしかなかったですね。薬の影響で顔はむくむし、病んだ小学校時代でした。学校でも「病弱な鈴木君」っていう目で見られるわけです。
それはしんどかったですね。
ゆうすけ
鈴木先生
でも小学5年生の時に祖母が見つけてきた病院で、鍼とか漢方の治療を受けたら、喘息がびっくりするくらい出なくなったんです。雑居ビルの一角でやっているクリニックだったんですけど、それがおもしろい先生で、学校の帰りに治療を受けに行くと、一緒に『水戸黄門』を見て感想を言わされるんです。
なぜに黄門さま…。
ゆうすけ
鈴木先生
謎ですよね。『水戸黄門』を観てから、やっと鍼の治療がスタートして、漢方薬をもらって帰るっていうのを半年くらい続けたんです。すると、喘息が出なくなって入院の必要もなくなりました。
すごい効果ですね。それがきっかけで鍼灸師の道を志されたんですか。
ゆうすけ
鈴木先生
そこまで明確ではありませんでしたが、高校生くらいの時に進路を決める中で、医療に携わりたいなっていう思いがなんとなくありました。それで「鍼灸師の道もあるな」と思って、いろいろ探したときに明治鍼灸大学(現・明治国際医療大学) を見つけたんです。
小学生の時の経験がベースにあったわけですね。
ゆうすけ
鈴木先生
そうなんですよ。本当にひらめきというか、小学生の時の記憶が蘇ってきて「鍼灸師になりたい」って思ったんです。
紆余曲折しながら「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」の研究へ
大学に入学して、いよいよ鍼灸について本格的に学ぶわけですが、実際に勉強してみていかがでしたか。
ゆうすけ
鈴木先生
それが、最初にちょっと絶望してしまったというか…。喘息で治療を受けた経験があったので、僕の中で鍼灸は病院の中でおこなわれているイメージだったんです。でも大学に入って法律とかいろいろ知っていくと「えー何これ」みたいな。医療と鍼灸には、思っていたよりもずっと溝があることを知りましたね。
医療の中での鍼灸の現実が見えてきて、やや期待外れでしたかね。
ゆうすけ
鈴木先生
でも大学時代は部活とか遊びにも取り組んで、楽しかったですよ。3年生の時に国家試験を受けて、4年生が実習だったんですが、その後の進路について真剣に考えるようになりました。当時はとにかく喘息の子どもに対して鍼灸をやっていきたい気持ちが強かったんです。
ご自身と同じような境遇のお子さんの治療を志したということですね。
ゆうすけ
鈴木先生
はい。喘息などの難治性疾患を診るような鍼灸に取り組みたいと思っていました。
大学で講義を聞いたり、勉強会に参加したり、いろいろと模索していましたね。そのうち、病院の中で臨床をおこなう研修生の制度と、臨床研究をメインに出来る大学院に興味を持つようになりました。ちょうど大学院で、基礎研究だけじゃなくて、臨床研究でも学位が取れることに決まった時期だったんです。
大学で講義を聞いたり、勉強会に参加したり、いろいろと模索していましたね。そのうち、病院の中で臨床をおこなう研修生の制度と、臨床研究をメインに出来る大学院に興味を持つようになりました。ちょうど大学院で、基礎研究だけじゃなくて、臨床研究でも学位が取れることに決まった時期だったんです。
タイミングもよかったんですね。誰か仲間はいらっしゃったんですか。
ゆうすけ
鈴木先生
現在、明治国際医療大学で学部長を務めている伊藤和憲先生が同期生でした。僕ら同級生からしても伊藤くんはすごいやつで、2年生ぐらいから生理学教室に出入りして実験をやっていたんですよ。
当時からただならぬ存在だったんですね。
ゆうすけ
鈴木先生
4年生のときにはすでに論文を書いていましたから。実は伊藤君から、研究という道があることを教わったんです。当時の大学院は基礎研究が主流の時代でした。でも、「これからは臨床研究みたいなのが絶対来るから、一緒に鍼灸の業界を変えていこうぜ」という熱い話を聞かされて。
大きな転機になったと。
ゆうすけ
鈴木先生
ただ、改めて自分の進路を考える中で、そもそも僕は喘息自体をほとんど理解していないなってことに気づいたんです。講義で習ったくらいなので、本格的に取り組むには考えが甘いなと思いました。
原点に立ち返ったわけですか。
ゆうすけ
鈴木先生
それでもう1回進路を見直そうと思っていた時に、大学院に臨床研究コースがあるっていうのを伊藤君に改めて聞いて、そこだと病院の中で喘息などの呼吸器疾患を扱いながら鍼灸の研究ができるかもしれないっていうので、そういう道を選択しようかなと思ったんですよ。
そこから本格的に研究をスタートされたんですね。やはり喘息の研究に取り組まれたんでしょうか。
ゆうすけ
鈴木先生
本当は喘息をテーマにしたかったんですが、吸入ステロイド薬が発売されていたので喘息患者の経過が大きく改善するようになったんです。
ですから、私が子どもの時のように酷い発作で苦しんでいる患者さんは明治鍼灸大学附属病院の内科外来ではいなかったですね。それで、成人で治療法が決まっていなくて鍼灸が適用になりそうなものということで、今でいうCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を研究テーマにすることにしました。COPDの症状である息切れに鍼が効くんじゃないかということで、修士での研究を始めたんです。
ですから、私が子どもの時のように酷い発作で苦しんでいる患者さんは明治鍼灸大学附属病院の内科外来ではいなかったですね。それで、成人で治療法が決まっていなくて鍼灸が適用になりそうなものということで、今でいうCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を研究テーマにすることにしました。COPDの症状である息切れに鍼が効くんじゃないかということで、修士での研究を始めたんです。
鈴木先生といえば、COPDの鍼治療研究の第一人者であり、鍼灸界の臨床研究をリードしてきた、言わばエリートってイメージがあります。
ゆうすけ
鈴木先生
ところが、修士はなんとか頑張って取れたんですけど、博士に進もうと思った時に僕のテーマだと症例が少ないということもあって断られてしまったんですよね。なので、2年間は外の病院に勤務しながら研究生を続けてチャンスを待ちました。
順調に進んだわけではなかったんですね。意外です。
ゆうすけ
鈴木先生
全く順調ではなかったですね。紆余曲折です。2年経った頃に国内留学のお話をいただいて、明治の大学院の博士過程に入って、すぐに国内留学という形で岐阜大学医学部の循環・呼吸・腎臓内科に進みました。
一度は、博士課程を断られたけど、それでも諦めずに続けたってことですか。
ゆうすけ
鈴木先生
そうですね、岐阜大学医学部で3年くらい症例を集めてそこで博士を取ったんです。そこからは京大の大学院でポスドクを経て、教員補助をしたりバイトしたりしながら、研究を続けたりとかしていましたね。
博士を取ってからも、教員補助やバイトなどしつつ、研究を続けられたと…。
ゆうすけ
鈴木先生
その後は、明治国際医療大学で教員をしながら、京大で取り組んでいたCOPDの研究も続けていました。2010年にその研究が終わったので、論文を書き始めて2012年に『JAMA internal Medicine』っていう有名な雑誌に投稿もできて、そこで一区切りついたような形ですね。
ついに努力が実ったんですね。
この発表はメジャーな新聞各紙にも取り上げられていました。COPD患者の主訴である労作時呼吸困難に対して、鍼治療が有効であることを世界で初めて実証したわけですから、それこそ鍼灸界に限らず、衝撃的な発表だったと思います。
この発表はメジャーな新聞各紙にも取り上げられていました。COPD患者の主訴である労作時呼吸困難に対して、鍼治療が有効であることを世界で初めて実証したわけですから、それこそ鍼灸界に限らず、衝撃的な発表だったと思います。
ゆうすけ