(1) 漢方医術復興の理論
(2) 素問医学の世界=古代中国医学の展開=
(3) 鍼灸茗話
(4) 刺鍼技術史
(5) 思うツボ
漢方医術復興の理論
■ 竹山 晋一朗(著) ■ 績文堂(1971年) |
私には3人の師がいる。伝統医学の理論を教えてくれた師、臨床家のこころを教えてくれた師、そしてこの医学の社会的存在意義を教えてくれた師である。
最後の師は一面識もなく、本書を通じて師と仰ぐに相応しいと思ったのである。
江戸時代までは漢方、鍼灸などは医療の主流であったが、それが明治政府により近代医学であるドイツ医学に取って替えられた。昭和になると、再び漢方等の伝統医学が見直されるようになった。この社会現象を明快に解説(史的唯物論の立場から)している。
彼によると、明治政府の目指した富国強兵、殖産興業政策にとって都合の良い外科学、社会医学(公衆衛生学、疫学等)が発展していた近代医学、中でもドイツ医学が採用されたのであって、決して伝統医学が劣っているからではないという。
また、昭和に入って、伝統医学が見直されてきたのは、個人を治す技術においては近代医学より漢方、鍼灸の方が優れていることを、何よりも一般の人々が認識するようになったことによると言う。
これは一例に過ぎないが、この本を読んで、私はこの伝統医学の道に入ろうかどうか迷っていた気持ちに決着がついた。
本書は、著者が戦前から書き続けた文章をまとめた本であるが、今でも色褪せず、むしろこれからさらに必要とされる一書である。
績文堂出版
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