【ハトマ。レポ】赤星先生「鍼灸師に知ってほしいがんのこと」

ハリトヒト。編集部のさまんさです。
「ハリトヒト。マーケット」最後の講演レポは赤星先生の「鍼灸師に知ってほしいがんのこと」です!

ハリトヒト。をリリースした2019年3月に、インタビューでトップバッターを飾ってくださった赤星先生。
インパクトがあり、とても印象に残っている記事です。

インタビューでは、鍼灸師になるまでの来歴のなかで、突如きゅっと奥歯を噛み締めて、ご自身が鍼灸学生のときにがんになったことをお話くださいます。
いままで公にはされていなかったがんのことを、ハリトヒト。で初めて語ってくださったのです。

そんな赤星先生が、ハトマ。に登壇してくださいました。
教科書にはまったく載っていない、貴重なお話でした。

「知らないなら、知ろう」




赤星先生
赤星先生
どんな患者さんに対しても中庸でいることを大切にしています。
重病か、そうじゃないかによって、患者さんを迎える気持ちが変わるのは「知らないから」だと思います。
父は「仕事では準備が大切」と言っていました。
わたしたちにとっての準備とは、患者さんの病気について知ろうとすること。
そして、きちんと知ることは結果的に鍼灸師としての武器になります。

鍼灸師が、がんなどの重病をもった患者さんを迎えたときに、腰痛や肩こりの患者さんに比べて緊張したり、気が重くなったりするのは、準備不足のせいであると赤星先生は語られます。

ハリトヒト。のキャッチフレーズ「知らないと気付いた。それは知りたいのはじまり。」にも通じるので、とてもドキっとしました。
知らないなら、知りたいで終わるのではなく、知るところまできちんと行動するべきであるというメッセージ。

これからさらにがんをはじめ、重病の患者さんと出会う機会がある鍼灸師は、もっともっと「知る」ために勉強をしなければいけません。
あらゆる仕事にも通じる「知る」ことの大切さ。
ベッドを整えたり、掃除をしたりするのと同じように、準備として「知る」ことが当たり前のお仕事なのです。

先生は参加者の方へのおみやげとして、がんに関する知っておいてほしいキーワードや情報をスライドにして作ってきてくださいました。
まったく知らないこと、知っているつもりでも誤解していたことなど、赤星先生ならではの切り口で説明してくださり、とても勉強になりました。

参加者の方々も、ご自身の経験やお話をしてくださり、このハトマ。の講座が、がんを「知る」ための入口となりました。
とても感謝しています。

がん=わたし、というアイデンティティではない


赤星先生は冒頭にこうおっしゃられました。

赤星先生
赤星先生
「がん=わたし」ではありません。
わたしは、アラサーで、女性で、鍼灸師で、デザインやアート、東洋医学に興味があり、がんサバイバーで、オンコロというサイトの運営にも携わるひとりの人間です。

「赤星 未有希」という人間がもつ多数の要素のひとつに、「がん」という要素がある。
がんは赤星先生を決定づけるアイデンティティではない、ということでした。

そのお話のなかで、わたし自身も「◯◯さんは腰痛持ちさん」や「□□さんはリウマチ患者さん」のように、患者さんのアイデンティティを疾患名でカテゴライズしていないか?と気付きました。
振り返ってみると、反省点がたくさんあったのです。

赤星先生
赤星先生
「腰痛で来院していた◯◯さんが、ある日突然にがんになることもあります。
そのとき、みなさんは◯◯さんに対してどう対応しますか?

がんになった患者さんは、がんの持つリスクと共に生きていらっしゃいます。
ほかの疾患を持つ患者さんも、特有の痛みやつらさと共に生きています。
だけど大切なのは、偏見や思い込みを捨て、患者さんと向かい合うこの瞬間に、一個人として接すること。
疾患名のイメージにとらわれず、◯◯さんは、今、どういう状況なのかを「知ろう」とすることが大切なのかなと思いました。
やはりここでも「知る」ことの重要さを感じます。

講演では、がんサバイバーの方々のリアルな言葉をたくさん教えていただきました。
先生ご自身も、鍼灸治療を受けることによって得た実感をお話してくださり、とても貴重な時間だったのではと思います。

そのなかには、自分が未熟だと感じていると、受け止めきれないような言葉もありました。
だけど、未熟だからといって避けて通れる仕事ではありません。

奇しくもわたしは、自分の家族をハトマ。の直前に亡くしました。
亡くなった家族のために、なにができるのか?と考えるばかりで、なにもできなかった自分を悔いています。
早く赤星先生のお話を聞けていれば…と何度も思いました。

しかし赤星先生と直接お話をさせていただき、こうしてレポートを書くことによって、「なにができるのか?と考えていた自分は、無力ではあったけれど、けっして間違ってはいなかった。その姿勢は医療者としてこれからもずっと持ち続けていたいし、誰かの力になるためにはもっと勉強が必要である」と思えるようになりました。

勉強するのは当たり前のことかもしれませんが、赤星先生が背中を押してくださったおかげで、わたしはとても早いタイミングで前を向くことができました。
亡くなった家族が残してくれた宿題と一つひとつ向き合いながら、鍼灸師としてやるべきことを続けていきたいと思います。

講演後、赤星先生に話かける参加者が多数いらっしゃいました。わたしもそのひとりです。
貴重な講演だけでなく、一人ひとり丁寧に対応してくださった赤星先生に感謝申し上げます。
ほんとうにありがとうございました。

>>> 赤星先生のインタビューはコチラ


3回にわたる、さまんさによるハトマ。のレポートにお付き合いいただきありがとうございました。
わたしの個人的な意見もたくさん含まれていて、嫌な気持ちにさせることもあったのではないかと思っています。
ハトマ。自体も「正解のないテーマ」が多く、みなさんをモヤモヤさせるような会でした。
実際のイベント中でも「うーん」と考え込むご意見があったことも否めません。

しかし、さきほども書きましたが、わたしはレポートを書くことによって、ハトマ。で感じた自分の気持ちと向き合うことができました。
こうして書くのは勇気がいるし、怒られちゃうかな〜と思って削った部分もたくさんありましたが、やはり、言語化して公開できるところまでしっかりと向き合えたことは、とても良い経験でした。

こうしてレポートできるのは一部分ですが、ハトマ。が鍼灸業界に対して投げかけた問いは、本質的なものも多かったと思います。
TwitterやFacebookを見ていると、日本伝統鍼灸学会の内容とも結びついて「日本鍼灸のアイデンティティをそもそも決めないといけないのか」といった意見が出たり、学校教育についての意見が継続して交わされていたりと、反応はさまざまで面白いです。

閉ざされた飲み会や勉強会のなかでの議論ではなく、ベテランから学生まで「ハリトヒト。」というwebメディアを通じて集まった鍼灸師の方々が、こうしてオープンに議論を交わすことに、少しでも意味があればいいなと思っております。

次回はTwitter上のハトマ。の反応をまとめてご報告します。
それにてハトマ。レポートはおしまいです。

来月からまた改めて「ハリトヒト。インタビュー」がはじまります。
現在準備中なので、お楽しみにしてくださいね♪
ではでは〜。

記事・撮影:さまんさ

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