鍼灸師の地位を向上させたい
鍼灸師の地位向上っていうのは、稼げる鍼灸師を増やしたいという意味もありますか。
ツルタ
今里社長
そうですね。でないと、マーケットが広がらないですから。
マーケットを広げたい、地位を向上させたいとおっしゃる前段階がちょっと気になって…。
なんで今里社長は鍼灸師ではないのに、そこまで鍼灸のことを思うのかってことです。
なんで今里社長は鍼灸師ではないのに、そこまで鍼灸のことを思うのかってことです。
ツルタ
今里社長
だって鍼灸の効果はすごいじゃないですか。いろいろな鍼灸治療を見てきて、患者さんが良くなることが分かっているからです。でも、国や世間からの評価がまだまだ低すぎる。だから、きちんとした論法をせなあかん、と思っているんです。
論法というのは、具体的にどういうことですか。
ツルタ
今里社長
例えば、お灸の温度であるとか、熱量について説明するってことです。もし患者さんが理解できないとしても、客観的な数値で表現してくださいと先生方には伝えています。「お灸の温度のカーブはこんなんですよ」とか、「あなたの場合、温度は55度で、熱量は3000ミリジュールぐらい。それを3壮しますからね」とか。
そこを重視している鍼灸師は、正直あまりいないと思いますが…。
ツルタ
今里社長
もちろん、伝統医学は補寫とか経験で治療する面があるのは知っているんですけど、数値を示せば患者さんも納得しやすいじゃないですか。なんで鍼灸の治療現場では、そのパフォーマンスをしないのかなって。
要するに、どうして社会一般に通用するような説明をしないんだってことですね。
ツルタ
今里社長
問題なのは、日本における鍼灸師の地位が低すぎることです。国がもっとバックアップしてくれたら、地位向上につながると思います。その代わり、今よりも勉強もせなあかんかも分からないけどね。だから意欲のある若手の先生方に対して、私たちが持つ情報は積極的に教えていきたいと思っています。こういうのはメーカーが率先して指導していかないとってことで始めたのが灸活未来塾です。65度のハードでやりましょう、皮膚については53度ぐらいですとか。そういう発想をどんどんメーカーが先生方に見せていかなあかん。
データを集めて国のバックアップを得たいという野望があることはわかりました。では、その国のバックアップというのは、具体的にどんな形で鍼灸を地位向上につなげてくれるとお考えですか?
ツルタ
今里社長
韓国の先生方に「日本でバンシンやっているメーカーです」って言うと、みんな知ってくれています。それくらいうちの治療器が韓国で売れているってことなんですけど、これははっきり言って保険の違い。向こうだとバンシンをチクッとするのも保険なんです。鍼を含む韓医学が公的保険の適応になってから、鍼灸の受療率も伸びてるようで。こうやって国のバックアップで保険が使えるようになれば鍼灸の地位向上になりますし、そりゃマーケットも広がるに決まってますわな。
お灸の概念を変えるために
御社の「モクサス」は、お灸の温度と熱量を測れる解析装置ですよね。
「モクサス」を製品化したのは、鍼灸師の技術向上、知識向上みたいなのが大きいということですか。
「モクサス」を製品化したのは、鍼灸師の技術向上、知識向上みたいなのが大きいということですか。
ツルタ
今里社長
お灸という行為をする上での温度とか熱量という概念が、全然教えられていないなって…。それに気付いて、この解析装置を製品化したいと思ったんですよ。
そんな理由があったんですね。
ツルタ
今里社長
「モクサス」を使うとわかるんですけど、同じ米粒大の艾炷でも捻る先生によって温度や熱量が全然ちがうんですよ。鍼灸師の先生方は、お灸の単位を米粒大3壮とか半米粒大5壮とかで表現されますけど、それってあんまり再現性がないんです。最終的には治療家の先生自身に、具体的な数値について勉強していただきたいですね。そこでモクサスみたいな解析装置が役立てるんじゃないかなと思っているんです。
数値化するのは、すごく意味のあることだと思います。米粒大の艾炷ならこのくらいの温度のカーブとか熱量とか、基準となる数値があると、お灸の定量化につながるので、灸研究の精度が上がるかもしれませんね。もしくは名人の灸みたいなものを実際に解析するのも面白そうです。
ツルタ
今里社長
実は亡くなった福島哲也先生のお灸のデータが残っています。温度のカーブや熱量の記録があるので、そういう意味で、福島先生のお灸を再現することも可能になります。
効かせるお灸が数値化されていたんですね。技術の伝承にも役立ちそうです。
ツルタ
今里社長
これまでも、もぐさの温度を測る機器はありました。全国の学校にも入っているんですよ。しかし、施灸熱量という概念が浸透していないわけです。今後は、皮膚にどれだけの熱量が及んでいるか、という概念を広める必要があると考えています。
それが、今里社長のやりたいこと。
ツルタ
今里社長
鍼灸の地位向上につながると信じているので。あとは、皆さんのような経験のある鍼灸師の方たちが、若手の先生たちや、これから鍼灸師を目指す方たちに、もっともっとワクワクするような将来を患者さんのためにメーカーと共に啓発していただくことを願っています。
【記事担当】
取材 = ゆうすけ・タキザワ・ツルタ
撮影 = ツルタ
文 = なるみさわ
編集 = ツルタ
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