大好きな自然が健康につながったら、これ以上幸せなことはない/鍼灸師:石川 弘樹
体験イベントを鍼灸のきっかけに

今日、駅に迎えに来てもらった時に、白衣と長靴という組み合わせの先生を見てかなり不思議で、でもどんな鍼灸院なのかワクワクする気持ちになりました。
私も、この環境を含めてお客様に価値を提供できることに対してはワクワクしかないんです。「こんなに楽しいことない」って思いながら日々取り組んでいます。ただ自然が相手なので、これをお客様からお金をいただくサービスとして提供することを考えると、ある程度大変さも出てきてしまうのは事実です。
お客さんにちょっとした農業体験とか、土を感じられる作業をやってもらうにしても、事前の準備がありますよね。特に畑や林を管理するのは重労働なんだろうなと…。
そうですね。開業するときに地域で1番成功されているお茶屋さんに、相談したことがありました。そこは添加物とか使わずに体に良い食品を提供していて、自分たちで調味料を作ったりとか、食材を作ったりされているんですね。そうしたら「まだ始めたばかりだから、すごく楽しくて情熱を持って取り組めると思う。でも3年、5年って時間が経つと大変さの方が上回ってくることもあると思うから、それも見越してやってみるといいよ」ってアドバイスしてくれたんです。
長期的なビジョンですね。実際にやってみてどう感じましたか。
確かに歳を重ねていくと、気持ちがあっても体がついてこない可能性はあると思います。将来、体力が落ちて自分の活動量が半分になっても大丈夫なように、10年後に大変になりそうなことは先回りしてやっておこうと思って、土地の改良とかを今がんばっています。
先生の治療院では、患者さんが何かを手伝うと1,000円割引というサービスをされていますよね。この企画はどんな思いで始めたんですか。
人の手を借りて、なおかつ手伝ってくれた人も喜ぶような仕組みで治療を絡められたらいいなと思って始めました。やっぱり生業としている以上、お金は大事ですけど、人とのつながりも大事なので。治療に対してお金で対価を払っていただくのも嬉しいし、手伝ってくれることで対価を払っていただくのも自分にとってはすごく価値があることなんです。1時間手伝っていただいたら1,000円分施術代と交換っていう形でやっているんですが、興味のある方は喜んで手を貸してくださいます。
自然を相手に作業したい方も多いと思いますが、先生のお人柄もあって、人が集まっているように感じました。
鍼灸を受けたことがない人にとって、いきなり治療を受けるのはハードルが高いと思うんですよね。でも鍼灸院で草取りやっているよとか、ブルーベリー食べれるんだよっていうのがきっかけだったら、ちょっと行ってみようかって思ってもらえることもあるわけです。そうすると、まずは人間としての自分を知ってもらえますよね。それは安心感にもつながるし、その後に心身の不調で相談するために来てくれて初めて鍼灸治療を受けたと言う方もたくさんいらっしゃいます。いろいろなイベントを開催してきましたけど、特に良かったのは蛍を見ながらお灸するイベントですね。
箱灸みたいな、器でお灸しながら蛍を見るというイベントで10~20人来てくれました。蛍を見ることが、お灸をするきっかけになればと思って企画したんです。先々その人が心身の不調で悩んだときに、お灸のことを思い出してくれたら近くの鍼灸院の門を叩くきっかけにもなるかもしれないですよね。体験イベントの企画を通して、鍼灸業界にも貢献できたらと考えています。
東洋医学を楽しんでもらいたい

商売としては、けっこう大変な面も多いんじゃないですか。自然相手だと、効率化とは真逆だと思うので…。
そうですね。ただ、今は自分の治療を気に入ってくれている方だけでなく、病気になる前に予防することの大切さに気付いてくれて、元気でも通ってくれている方たちも、少しずつ増えてきています。
「自然と共にやっていきたい」みたいな思想の鍼灸学生とか、若い鍼灸師がここに来るとすごく参考になりそうですね。もし自分も同じようなことやりたいって鍼灸師が来たら、どんなことを伝えたいですか。
やりがいはすごくあると思います。それに、やり方は1つじゃないはずです。地方だと土地が遊んじゃっているところがあるので、都会で行き詰っている方とか地元がある方、あるいは新天地を探している方が開業するとしても、地域貢献という意味でもとても大きな存在になると思います。一度に全部やらなくていいので、最初は鍼灸院から始めて、少しずつ自然を交えたプログラムを作っていくとか…そこは相談に乗ってあげられたらなと。例えば、こういう植物を植えると手間がかからないとか具体的にお伝えできると思います。
癒しの里を運営して良かったと思うのは、どんなときですか。
例を挙げると「自然のことを楽しみたい。体も良くしてほしい」っていうご要望で来られた方がいらっしゃいました。通常そんなに重症じゃない方には、先に外に出て作業してもらうんです。なぜかというと、先に自然が癒してくれるので。その方にも、外で野草を摘んでもらったんですが「石川さん、元気になったんで今日治療いいです」っておっしゃいました。
あるんですよ。「そろそろ治療しましょうか?」、「今日は触らなくていいです」みたいな。笑い話でもありますけど、やっぱり究極だなと思うわけです。私が手を使って治療してあげることも大事かもしれませんが、お客様としては自分の悩みが解決するなら、別に手段は何でもいいわけですよね。
自然の中に入ると癒される。先生はとにかく、楽しんでもらうことを大切にされているんですね。
もちろん困ったときには助けになれたらと思っていますが、型にはめずに東洋医学を楽しんでもらいたいっていう気持ちが強いですね。
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