鍼灸師:澤口 博の3冊

昭和鍼灸の歳月 経絡治療への道

■ 上地 栄(著)
■ 績文堂出版(1985年)

平成も終わろうとしている今、改めて考えると私たち鍼灸師が今の日本で治療できるのは明治以降、
ある時は日本政府の、時にはGHQなど数々の弾圧にも負けず、鍼灸を残してくださった先達がいらっしゃったからです。
著者の上地先生はあまり知られることのない方かと思いますが、今ある鍼灸のいくつかの流派の立ち上げ期に携わられた方です。
また、鍼灸の歴史や資料にとても詳しく、伝統鍼灸学会学術大会である先生が「昔の鍼灸の関連書籍や情報など上地先生に聞いて
『わからない』と言われたらそれ以上は調べても無理」という評を伺ったことがあります。

また、全国各地で鍼の名人といわれる先生がいたら、そこを訪ね、実際に鍼治療を受け「これは効く」という鍼の打ち方を会得され、実践された臨床家でもありました。
なぜ上地先生がそこまで鍼灸に人生を捧げてこられたのか、それはこの本に書かれた昭和の鍼灸師の方々の話を聞き、その生き様に魅せられたからでしょう。
ここに出てくる昭和の先達のエピソードは、「鍼灸師は人生を懸けるに価する」と教えてくれるものばかりです。
職業として鍼灸師を選ぶ方も確かにいいですが、鍼灸師として生きる、そんな覚悟をくれる本です。

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