5代目鍼灸師でも、隣の芝生は青いです/鍼灸師:樋口 美花

5代目鍼灸師のお給料事情

ちなみに今、お母様とお2人で治療院を営業し、実家で暮らしていらっしゃるんですよね。
となると給料体系は、どんな感じになっているんでしょう?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
えっと…。
「樋口家」という目線で見ると、財布は1つでもあるわけですよね?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
…まぁ、家の中でお金が回っているだけなんですよね(笑)。
今は「働いた日数分、お給料をいただく」というかたちです。
日給制?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
日給制ですね(笑)。
週のうち3日は6時間だけの営業、そのかわり金曜日と土曜日は10時間ノンストップで営業しているんですけど…。
日給は…?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
いずれも同じ金額です(汗)。
ふつうの会社員の方よりは、全然いただいていない…と思います(笑)!
親元とはいえ、厳しい環境…ですよね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
実はそうなんですよねぇ…(笑)。

おかあさんは感覚派

そういえば樋口先生のお母様は、何か流派はあるんですか?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
うーん、決まってないですね(笑)。
ただ、母は、川井健董先生のもとで学んでいたので、集中鍼もやりますし経絡治療の知識もあるようです。
東洋医学や日本鍼灸のベースをお持ちなんですね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
でも、その片鱗は見えたり、見えなかったり(笑)。
そうなんですね(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ある時、「どうやって治療しているの?」と、母に聞いたことがあったんです。
そしたら「うーん…。患者さんを触って、手が止まるところ。そこが悪いところだから。」 という、フワーっとした答えが返ってきました(笑)。
だいぶ、フワーっとしてますね(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
でも、母は鍼灸師になる前に看護師として働いていたから、西洋医学的な知識も豊富で、治療のエッセンスはたくさんあります。
流派は決まっていないですが、そういうベースがあって。
でも、基本的にはいわゆる「感覚派」ですね。
感覚派のお母様ですか。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
そう。感覚でつかんでいるから、人に教えようとしても言語化が難しいみたいで…。
わが子にも全然伝わらないという(笑)。
わかる気がします(笑)。
では、樋口先生自身に、何かベースになっている治療法はありますか?
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
私も母を見て学んでいるので、教えてもらったポイントは押さえていると思います。
運動鍼や、経絡治療もおこないますね。
うんうん。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
あとは、母のいう「手が止まるところに鍼をする」という感覚派的な治療もしています。
最初は全然分からなかったんですけど、徐々に、ね(笑)。
…わかるなぁ。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ん?
自分の親だからって、特別な理論をしっかりと教えてくれるわけではないんですよね。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ウラベさんも?
実は私も父から「痛いところに鍼をすると、良くなるんだよ」というザックリした教えしか、伝えられてないです(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
(笑)。
(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ちゃんとそこに至るまでの道筋があるはずなんだけど、何十年という経験の蓄積からくるものだから、伝えるのが難しいというか。
伝えようとはしてくれるんだけど…、わが子には結論だけを伝えてしまうみたいですよね。
「感覚的な謎の発言」だけを伝えられて、とまどい続ける私たち…(笑)。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
ほんと、そうです(笑)。
だって、うちのおかあさん、今も少しずつ治療法が変わるんですよ(笑)。
「ハルちゃん、おかあさんね、首の治療が上手になったの!」って!
この道30年の人に言われても…っていう、ね(笑)。
うふふ。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
隣の芝生が青く見えているだけかもしれないけど…、前はどこかに勤めたほうが、いろんなやり方を学べたんじゃないかな、と思うときもありました。
親が鍼灸師だからって、1から10まで手取り足取り習えるってわけじゃない。
ウラベ
ウラベ
樋口&ウラベ
樋口&ウラベ
そう。むしろ私たち、そんなにちゃんと教えてもらえてないよ…って(笑)!
樋口先生
樋口先生
だから、どんな場所で修行したとしても、自分の治療の基礎がちゃんとできていればいいのかなと思います。
患者さんは、目の前の先生が、どんなスゴイ先生の弟子かなんて関係ない。
やり方や流派も関係ない。
そう、そう。そこらへんは、関係ないことです。
ウラベ
ウラベ
樋口先生
樋口先生
目の前の患者さんが良くなって、笑顔で帰ってくれるかどうか。
大切なのは、そこなんじゃないかな。
うんうん。
ウラベ
ウラベ

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