大切にしたいのは環境づくり/日本伝統鍼灸学会 広報部長 :小貫 英人

日本の伝統鍼灸ってなんですか?

あの…、日本の伝統鍼灸ってなんですか?
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
そうなりますよね(笑)。
日本伝統鍼灸学会では、日本伝統鍼灸を4つの概念で定義づけしています。
その4つを教えてもらっていいですか?
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
①中国に発祥した医学思想を基礎とする
②日本の風土に培われてきた鍼灸医学である
③全人的調整を治療目的とする
④触覚を中心とした診断治療技術を重視する
これらの4つとされています。
ナ、ナルホド…。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
学会のテーマにも「日本鍼灸の確立に向けて」と入っているように、日本の伝統鍼灸とは何かをいまも突き詰めています。
継続しているんですね。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
ぼくは、伝統は時代に即して変化すると考えています。
伝統の柱をしっかりと立てて、時代に沿った変化をしながら繋いでいくのが伝統で、変化させずに繋いでいくのが伝承だと思います。
伝統と伝承の違い…。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
そこを履き違えちゃいけないと思っています。
これはぼくの主観ですが、日本伝統鍼灸学会がやるべきは、「伝統の柱」をどう定義付けるかです。
その柱をどういう言葉にしたらいいか、いまだ見つけられていない。
日本の伝統鍼灸はそれぞれ流派ごとに異なる姿をしているけれど、柱となるベースは共通しているのではないでしょうか。
日本の伝統鍼灸の共通する「核の部分」を把握し、それぞれが個別に進化や発展をしていても、その多様性をお互いに認めあうような環境づくりをおこなうことが大切なのかなと思っています。
とても共感できるお話です。共通の柱が見つけられたら、日本伝統鍼灸はもっとわかりやすく、しかも一体感出てきそうですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
偉そうなことを言ってしまいました。
諸先輩方どうかご容赦ください(苦笑)。

第47回 日本伝統鍼灸学会 学術大会

小貫先生
小貫先生
ちなみに今年の大会テーマは「日本伝統鍼灸の確立に向けて 日本の鍼灸の発想と継承」です。
とても高尚な感じですが…、何をするのかイメージ湧かないです(笑)。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
(苦笑)。
…では大会のポスターをご覧ください。

実技講演をやるんですね。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
「伝えたい。日本の鍼灸。-記憶と記録に残る臨床―」をテーマに、こちらの先生方が実技供覧をしてくださる予定です。
どの先生も超ベテランの先生方。これは貴重な機会ですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
ベテラン先生方の技術は、とても美しいですよ。
この「映像実技講演」というのは、どんなものですか?
はじめて聞きました。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
映像に収めて解説する新しい形の実技講演になります。
先生方に臨床の様子を映像におさめていただいて、それを解説していただくという。
それは、治療院で撮影するということですか?
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
そうです。やはり学会の舞台上でやるのでは、普段と雰囲気が違うだろうということで依頼させていただきました。
実際に治療院でおこなわれている臨床の姿が見られるなんて、嬉しいです。
ゆうすけ
ゆうすけ
面白い実技供覧の手法ですね。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
はい、だから多くの方に参加していただきたいと思っています。
東京大会は全国からのアクセスがいいでしょうから、今年は参加者が増えるんじゃないですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
だといいんですが、ちょっとどれくらいになるか、読めないんです…(汗)。
正会員以外の方も参加されますよね?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
はい、一般の先生方もたくさんいらっしゃいます。それから学生さんも大歓迎です。
なにか学生向けの情報はありますか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
ありがとうございます、それではポスターの裏にいきましょうか。

小貫先生
小貫先生
今年は特別学生セミナーを開催します。
テーマは「治療家の手の作り方・身体の作り方」です。
面白そうですね。なにか練習法でも習うのかな…、とても気になります。
ツルタ
ツルタ
寄金先生に長野先生…めちゃくちゃ豪華な講師陣ですね。
毎年、学生セミナーは部屋に入りきらないくらい大人気ですし。
ゆうすけ
ゆうすけ
これ行きたい!
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
すいません…、学生しか入れないんですよ。
えーっ!
ウラベ
ウラベ
(笑)。
編集部
編集部
小貫先生
小貫先生
それから、伝統に所属する先生は、日本の伝統鍼灸を代表するような団体、勉強会に所属している方がほとんどです。
いろんな団体の先生のお話が聞けるんですね。
ツルタ
ツルタ
自分が学びたい内容を見極められる良い機会になりそうですね。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
そういう目的で、参加していただくのも嬉しいです。
他にもたくさん講演がありますね。でも難しそうなテーマが多い。
ウラベ
ウラベ
以前インタビューさせていただいた松田 博公(まつだ ひろきみ)先生は『黄帝内経』の新解釈を発表するそうですね。
日本伝統鍼灸学会は古典をテーマにした発表が多いんですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
古典の文献研究をされている先生は多くいらっしゃいます。
私は勉強というものが苦手なので、純粋に尊敬します。
伝統の先生って、みなさん古典を読まれていたりします?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
いやいや、ぼくはほとんど読んだことないです(笑)。
そのあたりは誤解されているかもしれないですね。
伝統鍼灸と聞くと古典を読んだりしなきゃいけないのかなぁって思いますし…。
正直、そういうふうに思ってました(笑)。
ウラベ
ウラベ
講演する先生方がとても豪華ですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
いわゆる伝統的な鍼灸や研究をやっている先生にとっては、こんな先生が出てくるの?!というような魅力的なプログラムになっていると思います。
ポスターには載ってないけど、一般口演もありますよね?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
もちろんです、一般口演は大切ですから。
一般口演に限ると、どんな発表が多いですか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
メインは臨床報告と文献研究ですね。
臨床報告というと?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
単純に言うと一例報告です。
「こういう症状の方にこういう施術をして、こういう効果を認めました」というような単純な一例報告です。
先生方の臨床のお話が聞けるってありがたいですね。
ゆうすけ
ゆうすけ
小貫先生
小貫先生
そうなんです。先生方の臨床のお話を聞くのは勉強になりますし、とても面白いですよ。
でも、一例報告って、どうしても良かったとか、効いたとかの話が多くなりませんか?
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
そういう傾向はあると思います。
極端に言えば「たまたま効いた」みたいなのも含まれるかもしれないですね。
ツルタ
ツルタ
小貫先生
小貫先生
否定はしきれないです。
でも、そういった現場からの生きた症例報告が、実際の臨床に役立つことも多そうですね。
ウラベ
ウラベ
小貫先生
小貫先生
そうですね。最近ではナラティブといわれる臨床現場での物語性や、一例報告の大切さを重要視されるようになってきました。
我々の業界は一例報告を積み重ねていくことが一番大切だと思っています。

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