患者さんと生活を共有できるのが、訪問鍼灸の魅力です/鍼灸師:山田 誠

そもそも訪問鍼灸って何?

ところで、訪問鍼灸に定義ってあるのでしょうか?
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
定義があるのかはわかりませんが、「患家または介護施設に訪問して行う鍼灸施術」が訪問鍼灸だと思います。
ただ、これだと出張鍼灸も当てはまるんですよね。

訪問は療養費(保険)、出張は自費というイメージがありますが。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
療養費の該当基準も傷病名とのマッチになるので、訪問イコール保険を使った施術と思われがちですがこれも誤りで、なかには自費で患家および介護施設で施術を行う場合もあります。

自費の訪問鍼灸もあるんですね。なおさら訪問鍼灸とは?って疑問になりました。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
個人的な見解にはなりますが、往療の対象となる「外出困難」が訪問の定義だと思います。営業やセミナー時にも「自宅や介護施設で外出困難な方に行う鍼灸施術」として紹介しています。

基本的に訪問鍼灸って「施術料プラス往療料」が報酬でしたよね。
この往療料が認められるかどうかには、何か基準があるのでしょうか。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
厚生労働省の定める往療料については、「往療料は、歩行困難等、真に安静を必要とするやむを得ない理由等により、通所して治療を受けることが困難な場合に、患家の求めに応じて患家に赴き施術を行った場合に支給できること。」となっていることから、外に出られるか否かは重要だと思います。

歩行困難っていうのは、どの程度を指すのでしょうか。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
歩行困難には「独歩困難もしくは歩行に見守りが必要」が該当します。
車椅子使用・杖使用・介助者の必要など程度にはグラデーションがあります。

結局、歩行が困難かどうかは誰が判断するんですか?
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
訪問鍼灸において、この外出困難か否かは鍼灸師の判断によるとされています。

そこは鍼灸師なんですね。主治医の判断かと思っていました。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
ちなみに、訪問マッサージの場合は医師の判断のようです。

ホワイトな職場が多い理由

訪問鍼灸での、1人あたりの施術時間や1日あたりの患者数はどれくらいですか。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
1件当たりの移動時間が2030分、施術時間も2030分くらいですね。18時間労働として、178人が多いパターンかなと思います。1人の患者さんに週23回訪問するケースが多いです。

20分の施術では、どういうことをしているんですか?
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
バイタルのチェックから始まり、患者さんの状態をアセスメントしてから、施術に入っていきます。訪問鍼灸では、運動療法やストレッチを併用するパターンが多いです。私も主訴に応じて鍼治療と運動療法を行いながら、その前後で関節可動域やADLの変化を診て、トータルの治療時間を30分でおさめています。

院で行う施術と比べて、どんな違いがあると思いますか?
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
バイタルをしっかりとるところは、訪問ならではかもしれません。体温と血圧を測るほか、パルスオキシメーターを使用したり、呼吸数を診たりもします。ご家族や介護スタッフにあらかじめ、患者さんの状態を聞いておいて、現在の状況と大きく隔たりがなければ、そのまま主訴に対する施術をスタートする流れになります。

患者さんのお宅にお邪魔して施術をする点はいかがですか。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
これは大きな特徴で、患者さんの生活に合わせて仕事をしていくことになるので、勤務時間は一定で残業も少ないのかなと…。そうすると、施術者自身も自然と規則的な生活を送ることになります。訪問は、いわゆるホワイトな労働環境になりやすいと思います。

確かに訪問はホワイトってイメージありますね。施術者側の都合で夜遅くに訪問するというのは、ちょっと考えにくいです。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
基本的に、患者さんの晩御飯の時間までには、施術が終わりますからね。だから施術者も家族との時間が持てるし、なにより自分らしい生活ができるのは大きいですよ。

同意書と再同意

療養費を扱うには、医師の同意書をもらう必要がありますよね。最近の同意書事情はいかがでしょう。すんなり書いてもらえるものですか?
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
これには地域差があります。それから医師によっても鍼灸に対するイメージが違ってくるんですね。だから鍼灸師は不誠実と思われないように、患者さんだけでなく医師側にも、どんな施術をするのか、期待できる効果はどういったものかなどの説明が必要だと思っています。

なるほど。そういえば、いつからか同意書には再同意が必要になったと聞きました。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
平成3010月からですね。現在の同意書には期限があって、6カ月で再同意が必要になります。だから主治医とのコミュニケーションも必要になるのが訪問鍼灸の特徴ですね。

再同意がとれない場合ってあるのでしょうか。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
ありますね。ただ、基本的には、身体の変化をしっかり記録して、医師に再同意のタイミングや必要に応じて経過報告書を提出していれば、再同意に至ることが多いです。

ちゃんと報告をもらえると、医師も安心して同意書を書きやすいですよね。週に23回は施術しにいくってことは、固定の患者たちのところに、ルート訪問していくかたちでしょうか。サザエさんに出て来る“三河屋のサブちゃん”みたいな…。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
まさに、そうですね。なので患者さんには「訪問鍼灸」じゃなくて「出前」って伝えています(笑)。

顔を出して「元気そうですね」「今日はどうですか」みたいな感じですよね。週に23回の頻度で治療できるのは魅力的ですね。
タキザワ
タキザワ

山田先生
山田先生
23回くらいだと、ほかの介護保険のサービスを妨げることもありませんからね。訪問鍼灸では、一番多いパターンじゃないかなと思います。

NEXT:「いきなり訪問鍼灸をやるとダメ」は本当か?

1

2

3
akuraku3.jpg

関連記事

  1. 人のために動けるなら、できる限りのことをやっておきたい/鍼灸師:相澤 啓介

  2. 自分が地獄に行って、代わりに人を極楽に行かす/鍼灸師:舩坂 樹観

  3. 「人としての経験を積まないと」と思った/鍼灸師:五味 哲也

  4. 自分の可能性をみつければ、次の形が見えてくる/鍼灸師:橋本 由紀子

  5. 「伝わるように伝える」のが我々の責務/鍼灸師:澤口 博

  6. 基礎研究は、鍼灸業界を支える「縁の下の力持ち」/鍼灸師:岡田 岬