なんにも面白いことなんか喋られへん/鍼灸師:猪飼 祥夫

「わかる」は「分ける」

猪飼先生
猪飼先生
それは間違ってるわけじゃないよ。
ただ要するに、物事を理解するというのは、漢字の「分かる」ちゅうということなんや。「分ける」というかな。
そして、解剖の「解」で「解かる」。それも牛を切り開くわけや。
要するに物事は「分解」しないと理解できない。
「分解」しないと教えられない。
だから、理解するときに「カテゴリー分け」をするんですよ。
気虚と気実があったり、水の問題、血の問題、経絡の問題…というように分類しないといけない。
分類しないとわからないし、教えられない。
でも、これは分類の概念でしかない。
分類の概念ですか
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
たとえば「肝虚証」だと聞いたら、「この人=肝虚証の人なんだ」と思ってしまう。
肝虚証というのは肝虚証という分類の概念にすぎない。
もし、この「肝虚証」の概念に当てはまる人を100人集めてきたらどうなる?
一緒か? みんな違うやろ。
だから、これは、「事実」じゃない。あくまでも、ただの「分類」。
そういうことをどうするか? というのが臨床の上で1番難しいこと。
分類の概念と目の前の患者さん。どう折り合いをつけるかということですね。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
だけど、それを勘違いして、分類の概念を「事実」だと考えてしまう。
「事実」には近いで。近いけども「事実」ではない。
だから、僕はそれを「診たて」と呼ぶんだよ。
そういう意味では、必ず自分の責任で、何かしらの「診たて」が立てられるようになる必要がある、ということですね。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
そうそうそうそう。だからそのためには勉強しなければならない。
当然、東洋医学的な概念。それに付随する歴史的な背景。そして西洋医学の概念。
少なくとも研修医程度の西洋医学の知識を持たなきゃならない。
要するに病気の名前を聞いてわかるぐらいにならないといけない。そう思う。
学ぶことは山ほどありますね。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
まぁ、変な話、ひとりもんやったら1日10時間くらい勉強せなあかんわ。
デートする時以外は全部勉強(笑)。20代から30代の間に基礎をつくらないと。

スマートや。上手な人は。

物事を「分解」して「診たて」るのが「知識」だとして、「技術」はどうやって学んだらいいのでしょうか?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
それはやっぱり上手な人につくことやな。
師匠というか、このやり方を真似しようという人を見つけること。
だからうちに来た人たちにも、学会とか講習会に行く時は、実技を見ろと言ってる。
「座学はどうでもええ。 実技だけ見ろ、手を見てこい」と。
でも実技をパッと見て、「わかる」ためにはこちらも勉強してないといけませんよね。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
そうそうそう。
では、先生が実技を見る場合に「あの人は上手だ」と思うポイントはどこですか?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
そんなもん鍼管と鍼を持たせたらすぐわかる。どんくさくない。スマートや。上手な人は。
モゾモゾやってる人が上手やと思うか? 思わへんやろ(笑)?
パッと見た瞬間にわかるものってことですね。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
手の持っていきかたが違う。治るとか治らへんとかは別にして、上手な人はスマートや。
たしかに、上手な先生は所作が目を引くなぁ。
そのセンスを、真似ろってことですね。
スキカラ
スキカラ

猪飼先生の「守・破・離」

ところで、先生は今までどのように鍼灸を学んでこられたんですか?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
けっきょくね、僕は基礎を習ってないねん。1人の先生に。
30歳になる年から学校に行って、33歳に学校を卒業して、34歳のときに開業した。
もともと、うどん屋してたからな。最初の1年は、うどん屋をしながら、学校にいってたわ。
店の準備を、朝に全部して。昼は嫁さんとアルバイトの人に頼んでな。
先生がうどん屋さんだったという話は、いつ聞いても驚きます(笑)。
ちなみになんですけど、なんでうどん屋さんだったんです?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
いやいや、僕は実家が仕出し屋やからさ。
だから料理は何でもできんねん。大学時代には調理師免許を持っていたし。
じゃあ、なんでまたうどん屋さんに?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
いや、うどん屋ぐらいやったらできるやろうと思って(笑)。
(笑)。でも仕出し屋さんなら何でもできるわけですよね?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
なんでもできるよ。結婚式みたいな料理からやな。
中華もだいたい何でもできる、だからいつも言ってるやん。鍼よりも料理の方が自信があるって(笑)。
(笑)。
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
料理のことやったら聞いてくれてもいいけどな、鍼のことはわからへん。
偉い人がいっぱい、いてはるから(笑)。
なるほど(笑)。話を戻すと、先生は鍼灸の技術に関して、「守破離」の「守」がないっていうことですか?
スキカラ
スキカラ
猪飼先生
猪飼先生
ない、 ないねん。
要するに「守」に当てる時間がなかったわけや。
僕は1年からうどん屋をしながらやったからな。夜は病院で働いて。
で、3年の時に、「中国との交換留学制度」の記事を、新聞でたまたま見つけてな。
試験を受けたら、たまたま受かった。
僕は元々中国史が専門やったから、「とにかく中国に行きたい」と言って、嫁さんを説得して行ってきたんや。
すごい(笑)。奥さんよくOKしてくれましたね(笑)。
スキカラ
スキカラ

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