鍼灸ジャーナリストって名乗るのは半分冗談だよ(笑)
先生は鍼灸師の資格を取ってから、臨床はどれくらいされたんですか?
ツルタ
松田先生
ほとんど家族を相手にするくらい。
父も母も、ぼくの鍼と灸を受けながら逝きました。
父も母も、ぼくの鍼と灸を受けながら逝きました。
仕事しながら苦労して資格を取ったのに、かなり特殊ですよね。
ツルタ
松田先生
鍼灸師として3人の子どもを養う自信がなくて、会社を辞められなかったのよね。
ズルズルと続けてしまって、結局辞める機会を失ってしまった。
ズルズルと続けてしまって、結局辞める機会を失ってしまった。
新聞社には定年までいらっしゃったんですよね?
ツルタ
松田先生
そう。だからずっとペーパー鍼灸師なの。
それでも記者の経験を持つジャーナリストの松田先生だから、鍼灸業界で可能だったことがたくさんありますよね。
ツルタ
松田先生
まあね。「鍼灸ジャーナリスト」を名乗っていたからね。
それって冗談なんだけどね(笑)。
それって冗談なんだけどね(笑)。
えっ、冗談なんですか?!
ツルタ
松田先生
35年間、記者をしたけれど、自分のことをジャーナリストと名乗ったことは実は1度もなかったのよ。
それはどうしてですか?
ツルタ
松田先生
日本の企業内ジャーナリストって、自分の意思で調査報道しないし、オリジナルな価値観や倫理を打ち出す勇気もない。
基本的に官庁や企業、警察の広報係にすぎない。
もちろん、例外はいるけどさ。
だから「ジャーナリストって名乗りたくないな」というのがあって、1度も名乗ったことはなかったのよ。
基本的に官庁や企業、警察の広報係にすぎない。
もちろん、例外はいるけどさ。
だから「ジャーナリストって名乗りたくないな」というのがあって、1度も名乗ったことはなかったのよ。
なるほど。
それなのにどうして「鍼灸ジャーナリスト」と名乗ったんですか?
それなのにどうして「鍼灸ジャーナリスト」と名乗ったんですか?
ツルタ
松田先生
文章1つ書くにも、肩書きがないって本当に不便なの。
まあ、不便かもしれないですね。
ツルタ
松田先生
それで「医療ジャーナリスト」が世の中にいるなら、「鍼灸ジャーナリスト」もアリかなと思って冗談半分で言っちゃおうと思ったの(笑)。
…これはショックですよ。
ツルタ
松田先生
あはは。ところがね、鍼灸ジャーナリストって名乗ると、「お前ジャーナリストのくせにこんなことも知らないのか」とか、「ジャーナリストならもっとこういう取材をすべきだ」とか言う人が出てくるのよ。
ジャーナリストは大変ですね(笑)。
…あえて聞きたいのですが、先生にとってジャーナリズムとは?
…あえて聞きたいのですが、先生にとってジャーナリズムとは?
ツルタ
松田先生
あんまりマジメに考えたことないな(笑)。
(笑)。
編集部
日本鍼灸の地図と、日本鍼灸の問題提起
松田先生
日本鍼灸は百花繚乱の状態だから、患者さんは鍼灸を受けたくてもどこに行っていいかわからないし、鍼灸師にとってもどこで学べばいいかわからなくて不便だよね。
鍼灸界って本当にわかりづらいですね。
ツルタ
松田先生
それで大まかなカテゴリー、区分があった方がいいんじゃないかなって思ったの。
地図みたいなさ。
地図みたいなさ。
それが『鍼灸の挑戦』のようなフィールドワークにつながるんですね。
結果的に日本鍼灸の地図は作れましたか?
結果的に日本鍼灸の地図は作れましたか?
ツルタ
松田先生
いやいや…。僕が『鍼灸の挑戦』以来やってきたのは、そのための材料集めにすぎなくて、全然作れていないわけ。
地図作りってやはり大変でしょうね。
ツルタ
松田先生
今は鍼灸界も多様化、複雑化が進み、ますます作りづらくなっていると感じるけど…それは皆さんが作るべきだよね。
それこそ「ハリトヒト。」が、これから何年もかけていろんな人に会っていけばいい。
それこそ「ハリトヒト。」が、これから何年もかけていろんな人に会っていけばいい。
鍼灸界のいろんな人を記録したら地図作りに役立ちますかね?
ツルタ
松田先生
うん。ただランダムに会っていくと、時間がいくらあっても足りないよね。
そうですよね。記事って意外と時間と手間が…。
ツルタ
松田先生
だから「この人にはこういうテーマで聞く」と決めて会うのが大事かもしれないね。
別の人に聞いた同様なテーマと絡み合わせてマップ化していくとか。
何か大きな戦略構築があれば、時間は節約できると思うよ。
別の人に聞いた同様なテーマと絡み合わせてマップ化していくとか。
何か大きな戦略構築があれば、時間は節約できると思うよ。
ぼくらって、今はほとんど計画性がないんです。
それこそ今後の方向性によっては、日本鍼灸の地図作りが課題になるのかもしれない。
それこそ今後の方向性によっては、日本鍼灸の地図作りが課題になるのかもしれない。
ツルタ
松田先生
ぼくも計画的に取材したわけじゃなくて、けっこう面白さとか興味だけで会った人もいるんだよね。
あとから考えると、それがちょっと時間の無駄だったかなとも思うんだ。
あとから考えると、それがちょっと時間の無駄だったかなとも思うんだ。
やっぱり「日本鍼灸の地図を作りたい」という想いはあったんですね。
それってジャーナリズムな気がしますが。
それってジャーナリズムな気がしますが。
ツルタ
松田先生
いや、『鍼灸の挑戦』をジャーナリズムと呼ぶのは難しいね。
あれは、フォークロアだから。はは(笑)。
あれは、フォークロアだから。はは(笑)。
現実の鍼灸業界を理想化したとおっしゃっていましたね(笑)。
ツルタ
松田先生
むしろ、そのあとに書いた『日本鍼灸へのまなざし』の方がジャーナリズムだよね。
問題提起も入っているからですか?
ツルタ
松田先生
まぁ、ぼくの視点からみた日本鍼灸の課題、問題点だから偏っていて、バランスがとれているとは言えないけど。
それでもなんとか僕の力量の限り問題提起をしたんだよ。
そして「みんなで一緒に議論しよう」と。
そういうスタンスで書いている。
それでもなんとか僕の力量の限り問題提起をしたんだよ。
そして「みんなで一緒に議論しよう」と。
そういうスタンスで書いている。
広く深く議題をあげているというか…、『日本鍼灸へのまなざし』の熱量はすごいですね。
ツルタ
松田先生
今は気力が薄れているから二度と書けないね。
「松田博公の5冊」を読んで貰えば分かるけど、あの本が457ページで、あれだけ注釈が詰まっていて、定価3,654円とは、なんてお買い得なんだと思うよね(笑)。
「松田博公の5冊」を読んで貰えば分かるけど、あの本が457ページで、あれだけ注釈が詰まっていて、定価3,654円とは、なんてお買い得なんだと思うよね(笑)。
たしかにページの下部は注釈だらけでしたね、小さな字で(笑)。
先生が『まなざし」で日本鍼灸の問題提起をしたのは、鍼灸ジャーナリストならではの仕事だと思います。
先生が『まなざし」で日本鍼灸の問題提起をしたのは、鍼灸ジャーナリストならではの仕事だと思います。
ツルタ
松田先生
ちなみに今は「鍼灸ジャーナリスト」じゃなくて「黄帝内経研究家」と名乗ってるの。
えー!! 「鍼灸ジャーナリスト」から「黄帝内経研究家」に!?
ツルタ
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