病人の人生じゃない。「普通」になりたかった/鍼灸師:鈴木 咲緒

普通じゃなくていい。今の自分がいい

開業後は、思い描いていたような鍼灸院はできていますか。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
もともと理想とするイメージはあんまりなかったんですけど、自分が重い病気を経験していることもあって、誰かの助けになりたいっていうのは1番にあったんですね。どういうご縁なのか、今も重い病気を抱えている患者さんの割合は多いですね。自分が抗がん剤の治療を受けたり、辛い治療を経験したりしているのは、鍼灸師として役立っていると思います。でも病気の重い軽いで患者さんを判断したくないっていう気持ちもあるんです。どんな病気でも、その人にとってそれが辛い状態であれば、その辛さを取ってあげたいと思って治療をしています。
咲緒さん自身は、病気で鍼灸治療を受けていた時に、その効果をすぐに実感できていたんですか。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
私自身は吐き気が辛かったんですけど、即効性があるのは、やっぱり鍼灸の強みだと思います。
でも、小さい頃から鍼灸治療を受けていて、途中までは正直、あんまり効果を実感できなかったんですよ。「効いてんの、これ?」みたいな。あんまり信じていないところがありました。
そうだったんですね。身近ではあったけど。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
でもある時から、鍼灸の効果を実感できるようになりました。病気の時に、健康オタクの母に効果がありそうなものを色々と紹介されたんです。それこそ食品とか酵素とか…。かえって疲れてしまってどれも続かなかったんですが、鍼灸だけが残ったんです。ゴールデンウィークとかに鍼灸の治療を休んだら、それで体が動かなくなっちゃうことに気づいて。鍼灸を受けないと体が保たないことを身をもって知ったんです。
鍼灸がマイナスの状態から、なんとか動けるぐらいまで引き上げていたっていうことに気付いたんですね。
咲緒さんは、鍼灸師としての活動に加えて、ボランティアとして骨髄バンクの啓蒙活動にも取り組まれていますよね。そちらもライフワークにしていきたい気持ちは大きいんですか。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
もともとはボランティアをする気持ちは全然なかったんですけど、あれよあれよといろんなことを頼まれるようになって今に至るという感じです。講演とかでお話しすると、さまざまなご感想をいただけるのがすごく嬉しいですね。
鍼灸で患者さんに喜んでもらえるっていう嬉しさとは別ですが、自分の活動が名前も知らない誰かの力になっているかもしれないなって思えるんですよ。だから今は使命感みたいなものがあります。誰かがやらなきゃ誰にも知ってもらえないと思うので、まずは骨髄バンクの重要性を知ってもらうことから始めています。
骨髄バンクという言葉は知っていても、その重要性まではよく知らない人も多いと思います。実際に骨髄移植を受けた経験から、何かメッセージをお願いしたいです。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
移植を受けた日っていうのは、2つ目の誕生日っていうことで「セカンドバースデー」って言うんです。そのくらい骨髄移植を受けた日は、患者さんにとってすごく大事な日になりますし、その日を思わない日は一生ありません。今どれだけ医療が進んでも、ドナーさんを待っている人っていうのは、まだまだいるんです。病気で苦しんでいる人たちのために、何ができるだろうっていうことをぜひ考えてみていただきたいです。自分ができる範囲で良いので、献血をやってみようとかドナー登録してみようとか、この記事が行動のきっかけになればいいなと思います。
ありがとうございます。お話をうかがって、骨髄バンクに関する活動もそうですけど、例えば東京まで勉強へ行く積極性とか知的欲求みたいなものも、咲緒さんのすごいところだなと感じました。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
確かに、よく毎週通えたなって思いますね。でも必死でした。学校を卒業したものの、このままでは全然治療できないっていう不安がすごくて、その不安を拭うためには何かを得るしかないと思っていたんです。この新潟の地に積聚治療を私が持って帰るんだっていう気概というか、使命感みたいなものに突き動かされていましたね。
ところで、咲緒さんが欲しがっていた「普通」は手に入ったんでしょうか。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
すごい質問ですね。あれだけ「普通」にこだわっていたんですけど、そもそも今が普通じゃない。鍼灸師も変人が多いと思っていて。骨髄バンクのボランティアも、鍼灸学校を卒業してから始めたんですけど、そのご縁でテレビにもちょこちょこ出してもらえるようになったんです。病人としての人生は嫌だと思っていたのに、結果的に病人としての経験が今に活かされているので、普通であるかどうかなんて全く気にならなくなりましたね。
咲緒さんの場合、病気になって社会的な「普通」を強く欲するようになりましたよね。でも今は、普通の先を生きているというか、正直だし、良い意味でちゃんと変人さが発揮されているんだと思います。
ツルタ
ツルタ
鈴木先生
鈴木先生
多分病気にならなければ「普通がいい」とか、「普通じゃなくなった」とか、そういうことを考える機会もなかったと思うんです。病気になって得られたものは本当に大きくて、病気に感謝しているとまでは言わないけど、今の自分がいいなと思っています。

 

Twitter : https://twitter.com/89kadoya
骨髄移植を知ってもらうための活動 : https://www.youtube.com/watch?v=yde8UVIsFWI

【記事担当】
取材 = ゆうすけタキザワツルタ
撮影 = ツルタ
文   = なるみさわ
編集  ツルタ

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